「着物を着ているとほめられた」
「着物を着てお店に行ったら丁重に扱ってもらえた」
これはネット上で見たことのあるエピソードです。
個人的には、知らない人から着物をほめられたことは数回程度です。着物を着ていたおかげで特別扱いされた経験はありません。
(たぶんですが、着物を着ていたから丁重に扱ってもらったというよりは、そもそも、洋服だったとしても、丁重に扱ってくれるようなホスピタリティが高いお店だったのでは、と思ったりしています。)
ですが、そんな私でも、忘れられないような出来事があそのお話をシェアしたいと思います。
心が温かくなった話
着物の光沢感を甘く見た結果
その日、特に用事はないものの、着物が着たかったので外出をすることにしました。
選んだ着物は少し派手なピンクの色無地。
30歳を過ぎたくらいの私にはちょっと似合わないかも、と思いながらも、せっかくなので着てみたのです。

思いのほか、部屋の中ではさほど派手には感じず、薄いストールを羽織って外へ出ました。
いざ外に出てみると、お天気がいいおかげで、心なしか着物が輝いて見えます。
いや、「見える」のではなく、美しい光沢感のおかげで、実際に輝いていました。
「は、恥ずかしい・・・。でも今更後戻りはできない・・・」
そう思って電車に乗り込んだものの、やはり落ち着きません。
二駅ほどで電車を降り、最寄りのショッピングセンターへ少し立ち寄りました。うわの空で店内をうろついたのち、いそいそと帰りの電車に飛び乗りました。
足早に帰る私、その時・・・
「やっぱりもうこれは無理だな。」
そう考えながら電車を降り、ストールでできるだけ輝きを覆いながら歩いていたその時、後方から声をかけられました。
まだ学生くらいの、若い女の子でした。
セリフははっきりと覚えていないのですが、「綺麗な着物ですね」といった内容でした。
なんと同じ電車に乗っており、綺麗な着物だと思ってくれていたそうです。
ほんの少しだけ会話をしたあと、
「突然すみませんでした、変な人みたいですみません」
と言って走って行ってしまいました。
耳が赤くなっていましたし、少ない会話の中でも、無言の空間を埋めようとしている感じがあったりして、たぶん慣れない中で勇気を出して話しかけてくれたのではないかと思います。
(私には分かる。たぶん似たタイプだから。)
自分のコミュニケーション能力を呪う
私自身、コミュニケーションが苦手な方なので、「ありがとう」「嬉しい」くらいしか返せず・・・。
せっかく(多分勇気を出して)話しかけてくれたのに。最終的に「変な人みたいですみません」と謝らせてしまって、そこは本当に申し訳なかったです。
着物ってすごい!
私の反省はさておき、この時本当に感動したことを覚えています。
私がその時に着ていた着物は、華やかな絵柄が描かれたものでも、豪華な刺繍が入ったものでもありません。
色は華やかだったけど、無地のシンプルな着物です。(さらに言えば、リサイクルショップで購入したものです。)
話しかけてくれた女の子は、浴衣と着物の違いもわからないと言っていました。知識がなくても、「綺麗」と声をかけたくなるほどの魅力が、着物にはあるということですよね。これって、すごいことだと思いませんか?
着物を着ていてよかったこと、不動の1位です。
あの子のように、「着物っていいな」と思ってくれる子や、「自分も着てみようかな」と思ってくれる子が増えるといいな、という願いを込めて。
着物にまつわる超個人的感動エピソードでした。